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ナトリウムの効果・効能




体液の主要成分

ナトリウムは体液のうち細胞の外にある細胞外液の主要な成分です。では体液とは何なのかについてまず見て行きましょう。 身体を構成する体液は細胞内の細胞内液と細胞の外にある細胞外液からなります。細胞外液は血漿と組織間液からなり、腹腔液や胸腔液などの体腔液や骨や結合組織に含まれる水分も細胞外液に位置づけられています。体液全量は男性では体重の60%(細胞外液15%、細胞内液45%)、女性では55%(細胞外液15%、細胞内液40%)、乳児では77%(細胞外液29%、細胞内液48%)となっています。

体液細胞内液
細胞外液血漿
組織間液
体腔液
骨や結合組織に含まれる水分

細胞の内外を隔てている細胞膜は半透膜で水を自由に通すので、細胞外液と細胞内液の浸透圧(水を引っ張る力)が変化すると細胞内外で水の移動が起こります。細胞外液と細胞内液の浸透圧平衡は、溶解成分であるミネラルやタンパク質によって保たれています。

NA+(ナトリウムイオン)は細胞外液の陽イオンの主体であり、陰イオンとしてはCL-(塩素イオン)とHCO3-(炭酸水素イオン)が主体となっています。K+(カリウムイオン)は細胞内液の陽イオンの主体であり、陰イオンとしてはHPO4-(リン酸水素イオン)が主体となっています。

ナトリウムイオンの体内分布は血漿に11.2%、骨に交換不可能なものとして20.3%、交換可能なものが13.8%、組織間液29.3%、結合組織に11.7%、体腔液2.6%、細胞内液2.4%となっています。






生体内での情報伝達に関与

情報伝達は人間の様々な生命活動に関わっていて、例えば神経間の信号伝達をはじめ、筋肉の収縮、腺組織での外分泌やホルモンの内分泌でも情報伝達が働いています。ナトリウムはこの情報伝達への働きに関わっています。具体的には「活動電位の働き」と「細胞膜内外の電位差の維持」の2つの働きに関与します。

まず活動電位について説明します。通常細胞の外はプラス、中はマイナスで安定していますが、活動電位が発生すると細胞膜上のある一部分でプラスとマイナスの逆転が発生します。これを活動電位といいます。活動電位はさらに横に、横にと膜上を移動していき情報を伝達していきます。活動電位は神経同士の情報伝達や神経から筋肉・腺組織など様々な細胞間での情報伝達に利用されます。



活動電位では、まずプラスの電荷を帯びたナトリウムイオンが細胞内へと流入してきます。その結果細胞内の電荷はプラスへと傾きます。次に同じようにプラスの電荷を帯びているカリウムイオンが細胞の外へと流出していきます。その結果細胞内は再びマイナスの状態へと戻ります。活動電位によるプラスとマイナスの逆転現象はこのようにナトリウムとカリウムの移動によるものなのです。

活動電位が発生するためにはまず細胞膜内外の電位差が維持されている必要があります。これにはナトリウムポンプやカリウム漏洩チャネルが働きます。ナトリウムポンプは細胞の内から外へナトリウムイオンを3つ、外から内へカリウムイオンを2つ移動させます。どちらもプラスイオンです。細胞内に入ってくる量よりも外に出る量の方が多いので外側がプラスに傾くわけです。またカリウム漏洩チャネルは常にカリウムを細胞外へと移動させます。どんどんと細胞外へカリウムがでていくので、こちらも細胞外がプラスになる要因となります。このようにして細胞内はマイナス、細胞外はプラスという電位差が維持されています。

くわしくは以下のページで解説しています。

※関連コラム  >>情報伝達とミネラル



浸透圧の調節

体重60kgの成人の場合、体内にナトリウムは120g、カリウムは240g存在します。ナトリウムは細胞外に多くカリウムは細胞内に多いのが特徴です。カリウムはその98%が細胞内に存在し2%が細胞外に存在します。細胞内外のナトリウムやカリウムの濃度はナトリウムポンプという機構により一定に保たれています。

細胞内細胞外骨中
カリウム98%2%
ナトリウム10%50%40%

カリウムは主に細胞内の、ナトリウムは主に細胞外の浸透圧を維持しています。浸透圧とは水(溶媒)を引っ張る力の強さのことで、水に溶ける溶質の濃度によって決まり、濃度が濃いほど浸透圧は高くなります。半透膜をはさんで2つの溶液(溶媒に溶質が溶けたもの)がある場合、溶質の濃度が濃い方が浸透圧は高くなるので、薄いほうから濃いほうへと水が移動します。

濃度が同じであれば浸透圧は等しくなりますが、もし細胞内の濃度が高くなれば濃度を薄めようと外部から水が侵入し細胞は膨らんでしまい、最終的には破裂してしまいます。逆に細胞外の濃度が高くなると細胞内から水が抜けていき細胞はしぼんでしまいます。したがって細胞が正常に働くためには細胞内に多く含まれるカリウムと細胞外に多く含まれるナトリウムの濃度のバランスを安定させることが重要になります。この濃度を調節しているのがナトリウムポンプです。

ナトリウムポンプはNA+,K+,-ATPaseとも呼ばれます。アーゼとは酵素のことですが、ATPを分解する働きがあるのでこう呼ばれます。ATPを分解してエネルギーを取り出し、そのエネルギーでポンプとして働きます。NA+,K+,-ATPaseは細胞内のNa(ナトリウム)イオンが増え、細胞外のK(カリウム)イオンが増加すると活性化して細胞内から外へ3個のNaイオンを、細胞外から中へ2個のKイオンを運びます。



酸塩基平衡の維持

pH値(ピーエイチ値、ペーハー値)とは水溶液の酸性・アルカリ性の度合いを示すものです。化学では7が中性とされ、それ以上はアルカリ性、以下は酸性とされます。水(H20)は基本的には安定した状態で存在していますが、ごく一部はプラスのイオンである水素イオン(H+)とマイナスのイオンである水酸イオン(HO-)として存在しています。水素イオンと水酸イオンの数が同量だとpH値は中性(7)で、水素イオンの数が多くなるほどpH値は7より小さくなって酸性となります。逆に水酸イオンの数が多くなるとpH値は7より大きくなりアルカリ性となります。

体液のpH値は7.4(±0.05)の範囲内で一定になるように保たれていて、酸塩基平衡(均衡、安定)が崩れ酸性側に傾き7.35以下になることをアシドーシス、塩基側に傾き7.45以上になることをアルカローシスといいます。酸塩基平衡が崩れると下痢、嘔吐、脱水状態などの症状が現れます。ナトリウムは酸塩基平衡の維持に関わります。


その他の働き

ナトリウムには他にも神経や筋肉の興奮を静める働きや、グルコースやアミノ酸の能動輸送に関与したり、カルシウムなどのほかのミネラルの吸収を助ける働きなどもあります。






参考文献
サプリメントデータブック
身体に必要なミネラルの基礎知識
基礎栄養学 健康・栄養科学シリーズ
基礎栄養学 スタンダード栄養・食物シリーズ
栄養科学シリーズNEXT 生化学
わかりやすい生化学
「ビタミン伝説」の真実
栄養の基本がわかる図解事典



この記事を書いた人

kain

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ビタミネ管理人のkainと申します。2003年より当サイトを運営。ビタミンやミネラルに関する記事を多くの参考文献をもとに多数執筆。各記事には参考文献一覧も明示。

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text by 2013/12/07








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