核酸とは何か、DNA、RNAの違いについて
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核酸とは何か、DNA、RNAとは
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核酸とは
核酸はもともと細胞の核の中に存在するリン酸を含む酸性の物質として発見されましたが、当初はその働きについて詳しくはわかっていませんでした。後に遺伝情報の伝達や、たんぱく質の合成に関わる生命の根幹物質であることが判明します。また核の中だけでなく細胞質やミトコンドリアにも存在します。
遺伝情報の意義
全ての生命にとって生命を維持し、増殖し、次の世代に受け継いでいく上で欠かせないのが遺伝情報です。遺伝情報は親から子へと生体の様々な性質を伝えるだけのものではありません。遺伝情報は細胞が正常に活動するために必要なたんぱく質を、合成するための必要となる設計図のようなものでもあります。つまり日常生活を行っていく上でも欠かせないものなのです。
核酸にはDNAとRNAがある
核酸はDNAとRNAの2つに大別されます。DNAとはデオキシリボ核酸(deoxyribo nucleic acid)のことで、RNAとはリボ核酸(ribo nucleic acid)のことです。
DNAは遺伝情報を格納している部分で細胞の核内に存在します。RNAは遺伝情報の伝達やたんぱく質の合成などに働き、細胞の核内や細胞質内に存在します。RNAはその働きにより大きく3つの種類があります。
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核酸の構造
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核酸の基本構造
核酸は塩基と五炭糖とリン酸が結合したヌクレオチドが基本単位であり、通常核酸とはヌクレオチドがたくさん連なったポリヌクレオチドを指します。リン酸が加わらずに塩基と五炭糖のみで結合したものをヌクレオシドといいます。

DNAとRNAでは構成する塩基と五炭糖の種類が異なります。以下にそれぞれの構成成分の種類を掲載します。なお塩基はその構造からプリン塩基とピリミジン塩基に分類されます。
| DNA | RNA |
塩基 | アデニン、グアニン
(プリン体) シトシン、チミン (ピリミジン体) | アデニン、グアニン、ヒポキサンチン (プリン体) シトシン、ウラシル (ピリミジン体) |
五炭糖 | デオキシリボース | リボース |
リン | リン酸 | リン酸 |
核酸の名称
核酸は組み合わさる塩基と五炭糖の種類によって名称が異なります。例えば塩基のアデニンと五炭糖が結合したヌクレオシドはアデノシンと呼ばれます。そこにリン酸が結合するとヌクレオチドとなり、アデニル酸もしくはアデノシン一リン酸と呼ばれます。アデノシン一リン酸(Adenosine mono phosphate)は略称でAMPとも表記します。
DNAとRNAの名称の違い
五炭糖がリボース、すなわちRNAとなる場合はそのままAMPと表記されますが、五炭糖がデオキシリボース、すなわちDNAとなる場合は頭に(deoxy)がついてdAMPと表記されます。読み方もRNAではアデニル酸ですが、DNAの場合はデオキシアデニル酸となります。以下に組み合わさる塩基によってヌクレオシド、ヌクレオチドとなった場合はどのように名称が変化するのか、その場合の略号はどうなるのかについての一覧表を掲載します。
塩基 | ヌクレオシド | ヌクレオチド | 略号RNA | 略号DNA |
アデニン | アデノシン | アデニル酸 | AMP | dAMP |
グアニン | グアノシン | グアニル酸 | GMP | dGMP |
ヒポキサンチン | イノシン | イノシン酸 | IMP | |
シトシン | シチジン | シチジル酸 | CMP | dCMP |
チミン | チミジン | チミジル酸 | | dTMP |
ウラシル | ウリジン | ウリジル酸 | UMP |
生体内にはヌクレオチドとしてアデノシンにリン酸が2つ結合したアデノシン2リン酸(Adenosine di phosphate, ADP)やリン酸が3つ結合したアデノシン3リン酸(Adenosine tri phosphate, ATP)なども見られます。
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DNAとは
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DNAの構造
DNAは遺伝情報を格納していることはすでに述べましたが、この五炭糖のリボースを介してたくさんのDNAが鎖状につながっています。さらにDNAの一部である塩基はアデニンとチミン、シトシンとグアニン同士で水素結合する働きがあります。この結合により2つのDNAの鎖がらせん状に連なっていきます。
DNAの塩基の組み合わせでアミノ酸を指定
DNAの鎖では4つの塩基が様々な組み合わせで並んでいます。このうち3つ並んだ組み合わせを一組としてこれをコドンといいます。この組み合わせにより20種類のアミノ酸を指定しています。DNAの鎖を見ることは様々なアミノ酸の組み合わせを見ることにもなります。またアミノ酸が鎖状につながったものがたんぱく質なので、DNAの配列を見ることはたんぱく質の設計図を見ていることにもなります。
通常この設計図であるDNAは核内に入っており、外に出ることはありません。この設計図である遺伝情報は次で説明するメッセンジャーRNA(伝令リボ核酸)により複写され、核内から細胞質へと運び出されます。
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RNAの種類について
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メッセンジャーRNAとは
RNAにはメッセンジャーRNA(mRNA)とトランスファーRNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)の3種類があります。mRNAは核内で合成され、DNAの遺伝情報を写し取り、細胞質に移動し、たんぱく質の合成工場であるリボソームまで遺伝情報を伝達する働きがあります。
もう少し詳しく説明すると、まず2本のDNAの鎖が塩基同士で結合していますが、いち部分が酵素により切り離され、その切り離した部分にその塩基に対応するRNAが結合してRNAの鎖が作られます。そしてこの作られたRNAが核外へと移動し、リボソームと結合します。詳しくは
メッセンジャーRNA(伝令RNA)とは、で解説しています。
トランスファーRNAとは
人体のたんぱく質は全て20種類のアミノ酸の組み合わせからできています。
tRNAは20種類のアミノ酸に対応して、それぞれに一種類以上のtRNAが存在します。tRNAはリボソームでたんぱく質が合成される際にmRNAの情報に従って必要なアミノ酸をリボソームまで運搬する働きがあります。
具体的にはtRNAにはmRNAのコドンに対応した3つの塩基(アンチコドン)を持っています。このアンチコドンごとにtRNAが運んでくるアミノ酸も決まっています。tRNAはmRNAのコドンを読み取ってそれに応じたアミノ酸を運び、リボソーム内で運ばれたアミノ酸が結合していきたんぱく質が合成されます。
リボソームRNAとは
rRNAはたんぱく質の合成の場であるリボソームの構成成分です。rRNAは細胞の核の核小体で作られ、核の中でrRNAにリボソームたんぱく質が付着して、リボソームが途中まで作られます。途中段階にあるリボソームは細胞質に移動してそこで成熟してリボソームとなります。rRNAは全RNAの内の80%とその大部分を占めます。
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遺伝子や染色体について
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遺伝子とは
ここまで核酸やDNA、RNAについて詳しく見ていきましたが、DNAから構成される遺伝子や染色体についても解説します。まずDNAは鎖状に連なり、さらに鎖状に連なった二本のDNAがらせん状に絡まり合って伸びています。この二本のDNAのらせん状の連なりが遺伝子になります。
染色体とは
このDNAの連なり(遺伝子)がヒストン(たんぱく質の一種)に絡まって幾重にも折りたたまれたものが染色体になります。染色体にはRNAや非ヒストンたんぱく質も少量含まれます。染色体は核内に存在し、23対46本の染色体があります。
参考文献
栄養・健康化学シリーズ 生化学
栄養科学シリーズNEXT 生化学
基礎栄養学 健康・栄養科学シリーズ
わかりやすい生化学
栄養学の基本がわかる事典
よくわかる生理学の基本としくみ
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この記事を書いた人

kain
ビタミネ管理人のkainと申します。2003年より当サイトを運営。ビタミンやミネラルに関する記事を多くの参考文献をもとに多数執筆。各記事には参考文献一覧も明示。
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最終更新日 2018/04/08
公開日 2016/02/10
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