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はじめに | |||
酸化・還元とはビタミンやミネラルの解説の際にもよく出てくる言葉ですが、よくわからないまま使っている方やそのままさらっと読んでしまっている方もいるのではないでしょうか。そこで今回は酸化と還元が具体的にどういった化学反応なのかについて詳しく見ていくことにします。 |
他動詞か自動詞か | |||
酸化を簡単に言うと相手に酸素を与える反応です。同じ酸化ですが日常では次の2つの表現のされ方がよくされます。
どちらも同じ意味のように見えますが1の酸化は酸素が主体であり、鉄という目的語に対して動作を行うという他動詞になります。一方で2の酸化は鉄自身が酸化したという表現でこれは自動詞になります。このように酸化の表現が自動詞と他動詞でごっちゃになってることが理解しづらい原因の一つとなっています。ここでは他動詞に統一して表現することにします。その場合2は「鉄が酸化されてさびた」となります。 |
酸化と還元は同時に起こる | |||
酸化とは酸素を与える反応で、還元は酸素を奪う反応です。次のAとBの関係を見てみると、AはBに対して酸素を与えているのでこれは酸化です。一方でBからすればAから酸素を奪っているともいえるのでこれは還元になります。このように一方から一方への酸素の移動という同じ事象でも、見る側の違いにより表現が変わるのです。対象に酸素を与えるAのような物質を酸化剤といい、対象から酸素を奪うBのような物質を還元剤といいます。 ちなみにややこしい話にはなりますが酸化剤であるAはBを酸化している反面、Bにより酸素を奪われているともいえるので、このときA自身は還元されています。同様に還元剤であるBはAを還元している反面、Aにより酸素を与えられているともいえるので、このときB自身は酸化されています。 |
酸化とは電子を奪う作用 | |||
では実際に酸化の反応の例を見てみましょう。ここでは酸化鉄を例にします。鉄が酸化させられると酸化鉄が生成されます。その反応は以下の通りです。
このときの化学反応ではまず電子(e-)が移動してイオンになる段階が有ります。電子やイオンについてはあとで説明します。まずは化学反応の段階を説明します。
この式を説明する前にまずは電子やイオンについて説明しましょう。まず原子にはマイナスの電荷を帯びた電子とプラスの電荷を帯びた陽子が有ります。電子と陽子の数は同数なので原子は電気的には中性になります。もし電子の数が陽子の数よりも多くなった場合は原子はマイナスの電荷を帯びます。逆に電子の数が少なくなった場合はプラスの電荷を帯びます。このように原子の中の陽子と電子の数に差が出来たものをイオンといいます。イオンは原子が電荷を帯びたものなのです。電子の移動した数は価数とといいます。例えば1個の電子を受けいれた場合は-1価で2個の電子を受けれいれた場合は-2価の価数になります。逆に電子を1個放出した場合は+1価、2個放出した場合は+2価になります。 原子の中には通常の中性状態よりも電子を余計に引き込んだほうが安定するものや電子を放出したほうが安定するものが有ります。酸素原子は電子を2つ引き込んでマイナスの電荷を帯びたイオンとなって安定し、鉄は電子を3つ放出してプラスの電荷を帯びたイオンとなって安定します。この両者がくっつく場合、まずはそれぞれの原子はイオン化します。2つの鉄原子から1つあたり3つの電子で合計して6つの電子が酸素原子のほうに移動して、鉄原子は1個当たり+3価の鉄イオンとなります。一方3つの酸素原子は1つあたり2電子ずつで合計6個の電子を受取り、酸素原子1個当たり-2価の酸素イオンとなります。この両者が合わさって電気的に中性なFe2O3という化合物になります。 ここで再び酸化について見ていきますが、酸素を与える作用が酸化ですが、鉄が酸化させられ化合物である酸化鉄が生成される際、鉄原子1単位当たりからは3つの電子が酸素により奪われます。実は酸化とはこの電子を奪う反応のことをいうのです。逆に還元では電子が与えられます。本来は酸化とは電子を奪う作用のことであり、その一例が酸素を与える反応になるわけです。 |
水素を奪う反応も酸化 | |||
電子を奪う反応が酸化なので酸素を与える以外にも酸化は存在します。代表的なのは水素Hです。水素原子は電子を1個放出して+1価の水素イオンとなって安定します。例えば水H2Oを例に出して見ましょう。酸素に水素を化合させると水が出来ますが、その際酸素は水素によって2つの電子を受取り酸素イオンとなります。水素自体は水素イオンとなり両者が化合して水ができます。この際水素は酸素に電子を与えています。これは還元にほかなりません。水素を与えるというのは還元なのです。逆に水素を奪う作用は酸化になります。
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参考文献
物理化学 (わかる化学シリーズ) 有機化学 (わかる化学シリーズ) |
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text by 2015/03/17 |
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