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脂質の代謝


吸収されやすいよう乳化される

食事から摂取する脂質の大部分は長鎖脂肪酸からなるトリアシルグリセロール(中性脂肪)です。脂質は体内でリパーゼによって分解されます。リパーゼとは脂質を構成するエステル結合を加水分解する酵素群のことで、ギリシャ語の「lipos(脂肪)」+「ase(酵素)」に由来します。脂質の消化・吸収は小腸で行われます。胃液にもリパーゼは存在しますが、量が少なく、また胃液のリパーゼが最適に活動できるph値が5なのに対して胃液のpH値は2なので、酸性度が高すぎてうまく作用しないため、胃ではほとんど消化されません。乳児の場合は胃液の酸性度がそれほど低くなく、また乳汁に含まれる脂質が乳化されていて酵素の作用を受けやすいので例外です。

脂質は小腸でまず胆汁酸により乳化されます。脂質は水に溶けにくいため、水中では集まって大きな油滴となります。そのままだと大きすぎて酵素の働きを受けにくいので、まずは小さくする必要があります。胆汁酸は誘導脂質について2のところでも述べましたが、リン脂質と同様両親媒性の特徴を持っています。両親媒性とは水となじみやすい親水部と水をはじき油となじみやすい疎水部の両方の特徴を持つ性質のことです。

食物が十二指腸に入ってくると胆嚢が収縮して、胆汁酸が腸管内に分泌されます。分泌された胆汁酸は脂質が集ってできた大きな油滴に入り込み、親水部を外側に向け、疎水部を内側にして、その内部に脂質を取り込み小さな粒にして分解していきます。このような形状をミセルといい、このようにして水や油といった互いに混ざり合わない液体の一方を微粒子にして他方に分散させることを乳化といいます。

集って大きな油滴を作る


胆汁酸が油滴の中に入り込む


胆汁酸に囲まれ油滴が小さく分解



小腸で吸収

胆汁酸により乳化され小さな粒となったトリアシルグリセロールは膵臓から分泌されるリパーゼによりモノアシルグリセロールと脂肪酸に加水分解されます。モノアシルグリセロールの一部はさらにリパーゼにより脂肪酸とグリセロールに分解されます。モノアシルグリセロールと脂肪酸は胆汁酸とミセルを形成し、コレステロールや脂溶性ビタミンなどのその他の脂質もミセルに取り込みます。このように種々のものが入ったものを複合ミセルと言います。複合ミセルは小腸内壁の微絨毛(びじゅうもう)上皮の粘膜細胞に近づくと壊れ、中の脂質は粘膜細胞に取り込まれます。

ミセルを作るのに使われた胆汁酸は回腸で吸収され、再び肝臓に戻ります。そして肝臓から胆のうへと送られ再び腸管内に分泌され、腸管循環を繰り返します(1日6〜12回)。吸収されなかった胆汁酸は糞便中に排泄されます。


トリアシルグリセロールの再合成

小腸上皮の粘膜細胞に吸収された分解物は、細胞内で再びトリアシルグリセロールに再合成されます。この再合成の経路にはモノアシルグリセロール経路とグリセロール3リン酸を経由する経路が有り、小腸内ではモノアシルグリセロールを経由する経路が大半になります。脂肪酸はそのままだとトリアシルグリセロールの再合成には使えないのでアシルCoA合成酵素により脂肪酸アシルCoAとなります。

モノアシルグリセロール経路ではモノアシルグリセロールと脂肪酸アシルCoAが結合してジアシルグリセロールになり、さらに脂肪酸アシルCoAと結合してトリアシルグリセロールになります。

グリセロール3リン酸経路ではまずグリセロール3リン酸にはグリセロール由来のものと解糖系のグルコース由来のものの2パターンがあります。グリセロール3リン酸は脂肪酸アシルCoAと結合してジアシルグリセロールリン酸(ホスファチジン酸)になり、ジアシルグリセロールリン酸が脱リン酸によりリン酸基がはずれることでジアシルグリセロールになります。そしてジアシルグリセロールに脂肪酸アシルCoAが結合してトリアシルグリセロールが合成されます。

トリアシルグリセロールは食事由来のコレステロールやリン脂質、脂溶性ビタミンなどのその他の脂質や粘膜細胞内で作られたアポタンパク質と一緒に、脂質を輸送するリポタンパク質であるキロミクロンを形成します。キロミクロンはリンパ液中にもれ、リンパ管より鎖骨下静脈へと輸送されます。

グリセロールの大部分はトリアシルグリセロールに再合成されることなく門脈に入り、肝臓まで送られ、肝臓で利用されます。



中鎖脂肪酸トリアシルグリセロールの代謝

食事の大部分のトリアシルグリセロールは炭素数(12以上)の多い長鎖脂肪酸からなりますが、ミルクなどに含まれるトリアシルグリセロールは炭素数の短い(8〜10)中鎖脂肪酸からなります。中鎖脂肪酸はリパーゼにも反応しやすく、親水性なので胆汁酸によりミセル化されなくても加水分解され、小腸で吸収されます。吸収された中鎖脂肪酸は細胞内でトリアシルグリセロールに再合成されることなく、そのまま門脈に流入し、血清アルブミンと結合して肝臓まで送られます。このような経路の違いは乳児にとってのミルクからの脂質エネルギーの摂取に合理的であります。また中鎖脂肪酸トリアシルグリセロールは胆汁や膵液の分泌が十分でない術後のエネルギー摂取のための経腸栄養剤としても使われています。


外因性(食事性)脂質の代謝

静脈まで来たリポタンパク質であるキロミクロンは血中で同じくリポタンパク質であるHDLから、リポタンパク質リパーゼの補酵素であるアポリポタンパク質C-兇抜梁,房茲蟾まれる際に必要となるアポリポタンパク質Eが転移されます。キロミクロンは骨格筋や心臓、脂肪組織などの毛細血管を巡る過程で、リポタンパク質リパーゼによりグリセロールと遊離脂肪酸に加水分解され組織に取り込まれます。組織に取り込まれた遊離脂肪酸は骨格筋や心臓ではエネルギーとして利用され、脂肪組織ではトリアシルグリセロールとして貯蔵されます。細胞に直ちに取り込まれない遊離脂肪酸は、血清アルブミンと結合して循環します。

リポタンパク質リパーゼの作用を受けてトリアシルグリセロールの量の約90%が消失し、アポC-兇HDLへと戻されたキロミクロンはキロミクロンレムナント(Remnant=残骸)と呼ばれます。キロミクロンレムナントは肝臓にあるアポE受容体と結合して肝臓に取り込まれ代謝されます。


CM = キロミクロン、MP = マクロファージ、CE = コレステロールエステル、PL = リン脂質


内因性脂質の代謝

脂肪酸を材料に肝臓で作られるトリアシルグリセロールやコレステロール、アポリポタンパク質B-100などからリポタンパク質であるVLDL(超低密度リポタンパク質)が生成されます。VLDLもキロミクロンと同様血中でHDLからアポC-兇肇▲Eの転移を受けます。VLDLは骨格筋や脂肪組織などの末梢組織に輸送され、リポタンパク質リパーゼにより遊離脂肪酸とグリセロールに分解され、遊離脂肪酸は各組織に取り込まれます。こうしてトリアシルグリセロールの少なくなったVLDLレムナントはIDL(中間密度リポタンパク質)と呼ばれます。IDLは後で述べますがHDLの作用を受けてコレステロール量が増加し、コレステロール量の多いLDL(低密度タンパク質)となります。LDL中のアポB-100とアポEが末梢組織のLDL受容体と結合して取り込まれ、そこで遊離コレステロールや脂肪酸、アミノ酸などに分解されます。その他の血中を巡回するLDLは肝臓のLDL受容体と結合して肝臓に取り込まれ代謝されます。

VLDLは肝臓で合成されるトリアシルグリセロールの運搬体なので、肝機能が低下するとアポタンパク質やその他の構成成分の生成が滞り、結果肝臓にトリアシルグリセロールが蓄積して脂肪肝などを引き起こす原因となります。


コレステロールの回収

肝臓や一部小腸でも作られる脂質含量の少ないリポタンパク質であるHDL3(高密度リポタンパク質)は小粒子で円盤状の形状をしています。HDL3はHDL3の表面にあるレシチン-コレステロールアシル基移転酵素(LCAT)の働きにより、末梢組織からコレステロールをHDL3表面のレシチンの脂肪酸に移してコレステロールエステルを作ります。コレステロールエステルは次第にHDL粒子の中心部に集り、球状でサイズの大きいHDL2となります。HDL2は血中でコレステロールエステル輸送タンパク質(CETP)の作用を受け、コレステロールエステルをIDLやLDLへと移し、LDLが肝臓に取り込まれて肝臓で胆汁酸へと変換され必要量は再利用されそれ以外は体外に排出されます。

コレステロールの回収には肝臓にあるSR-B1というHDL受容体とHDLが結合して取り込まれるという経路もあります。このようにコレステロールが末梢組織から肝臓へと送られる経路をコレステロール逆転送系といいます。


悪玉・善玉コレステロールとは

コレステロールを多く含むLDLの量が多くなり、末梢組織に取り込まれずに残ったものが活性酸素と反応すると、酸化され酸化LDLになります。酸化LDLは末梢組織のLDL受容体と結合することはできず、マクロファージによって貪食されます。コレステロールを多く含むマクロファージは血管壁などに沈着して動脈硬化の発症の一員となります。本来ならコレステロールは体内に必要な物質ですが、このような理由からLDLに含まれるコレステロールは悪玉コレステロールと呼ばれます。悪玉と呼ばれていても特別悪いわけではなく、LDLが酸化された場合に問題が出てくるというわけです。

LDL量が増加

活性酸素により酸化LDLへ

マクロファージが酸化LDLを貪食

マクロファージが血管壁に沈着

動脈硬化発症の一因に

一方HDLは末梢組織や血管壁に沈着したマクロファージからコレステロールを回収し肝臓へと輸送する働きがあります。このためHDLに含まれるコレステロールを善玉コレステロールといいます。






参考文献
基礎栄養学 (スタンダード栄養・食物シリーズ)第3版
生化学 (栄養科学シリーズNEXT)
基礎栄養学
栄養・健康化学シリーズ 生化学
よくわかる栄養学の基本としくみ
有機化学 (わかる化学シリーズ)


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text by 2013/12/21






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