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誘導脂質について1(イコサノイド)




誘導脂質とは

今回から誘導脂質についてみて行きます。誘導脂質とは単純脂質や複合脂質から加水分解によってえられるもので、脂肪酸、イコサノイド、ステロイド、リポたんぱく質、脂溶性ビタミンなどがあります。脂肪酸については脂質について1で取り上げましたので、今回はイコサノイドについてみていくことにします。

誘導脂質脂肪酸飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸
イコサノイドプロスタグランジン、トロンボキサンチン、ロイコトリエン、他
ステロイドコレステロール、胆汁酸、ステロイドホルモン
リポたんぱく質キロミクロン、VLDL、IDL、LDL、HDL
脂溶性ビタミンビタミンA、D、E、K





イコサノイドの生成

イコサノイドとは多価不飽和脂肪酸であるジモホ-γ-リノレン酸(n-6系)、アラキドン酸(n-6系)、イコサペンタエン酸(n-3系)から生合成される生理活性物質です。n-6やn-3というのは炭素が連結した鎖状の形状の脂肪酸の端(メチル基側)から数えて何番目の炭素にあたる部分から二重結合がはじまっているかで分類されたものです。詳しくは脂質について1を参照してください。

ちなみにアラキドン酸(n-6系)とジモホ-γ-リノレン酸(n-6系)はリノール酸(n-6系)から、イコサペンタエン酸(n-3系)はα-リノレン酸(n-3系)から生合成されます。ジモホ-γ-リノレン酸の前駆体であるγ-リノレン酸とα-リノレン酸の2つのリノレン酸は分子式は同じですが結合の仕方が異なる構造異性体であるため、名称が異なります。


イコサノイドの種類と特徴

イコサノイドはジモホ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸を前駆体(前段階の状態)とした生理活性物質で、シクロオキシナーゼ(COX)による酵素反応によりプロスタグランジン(PG)、トロンボキサン(TX)が、リポキシゲナーゼ(LOX)の酵素反応によりロイコトリエン(LT)、リポキシン(LX)が生成されます。

ジモホ-γ-リノレン酸からは1シリーズのPGとTX、3シリーズのLTが、アラキドン酸からは2シリーズのPGとTX、4シリーズのLTとLXが、イコサペンタエン酸からは3シリーズのPGとTX、5シリーズのLTができます。同じイコサノイド(PG、TX、LT)でもシリーズが異なれば生理活性、生理作用も異なります。

イコサノイドの生理活性は多岐に渡りますが、平滑筋の収縮や弛緩、血圧の上昇や低下、血小板凝集の促進や阻害など相反する物も少なくありません。

イコサノイドは血小板や血管壁、白血球などの各組織で必要なときに直ちにごく微量生産され、産生組織付近で生理活性を発揮します。




プロスタグランジン(PG)

プロスタグランジンはイコサノイドの中でも最も種類が多くA〜Jまで10種類あります。さらに同じプロスタグランジンでも前駆体の違いにより3種類のタイプに別れます。プロスタグランジンの中でもPGIは生理活性がよく知られていてプロスタサイクリンと呼ばれています。下記は各プロスタグランジンの生理活性一覧です。

■ジモホ-γ-リノレン酸由来
PGD1
PGE1 
血小板凝集阻害作用
血管拡張作用、血小板凝集阻害作用、胃酸の分泌抑制、免疫機能正常化

■アラキドン酸由来
PGD2
血小板凝集阻害作用、末梢血管拡張作用、睡眠誘発作用
PGE2
血管拡張作用、胃酸の分泌抑制、気管支弛緩、子宮筋収縮、免疫応答抑制
PGF2
腸管の収縮、気管支収縮、子宮筋収縮
PGI2
血小板凝集阻害作用、血管拡張作用、動脈壁弛緩作用、血圧低下作用
臓器の血流増加、胃酸の分泌抑制
PGJ2細胞増殖抑制

■イコサペンタエン酸由来
PGD3
PGE3
PGI3
血小板凝集阻害作用
血小板凝集阻害作用
血小板凝集阻害作用、平滑筋弛緩、血管拡張


トロンボキサン(TX)

トロンボキサンはTXAとTXBの2種類があり、PGと同じように前駆体の違いにより3種類のタイプがあります。

■アラキドン酸由来
TXA2
血小板凝集促進作用、血管収縮、気管支収縮、血圧上昇作用

■イコサペンタエン酸由来
TXA3 弱い血小板凝集促進作用


ロイコトリエン(LT)

ロイコトリエンはLTAからLTEまで5種類あります。

■アラキドン酸由来
LTB4
白血球の遊走(膜通過)・凝集・貪食促進
LTC4
呼吸器系平滑筋の収縮
LTD4
呼吸器系平滑筋の収縮、血管透過性の亢進
LTE4呼吸器系平滑筋の収縮、血管透過性の亢進


リポキシン(LX)

リポキシンA
スーパーオキシドアニオン発生
リポキシンBナチュラルキラー細胞活性阻害


脂肪酸の摂取バランス

多価不飽和脂肪酸であるリノール酸やα-リノレン酸からイコサノイドの前駆体であるジモホ-γ-リノレン酸(n-6系)やアラキドン酸(n-6系)、イコサペンタエン酸(n-3系)への生合成ではリノール酸ルートとα-リノレン酸ルート共に共通の酵素が使われます。この酵素はn-6系よりもn-3系に優先して使われる特徴があります。したがってα-リノレン酸(n-3系)の脂肪酸を多く摂取するとその分n-6系のジモホ-γ-リノレン酸やアラキドン酸の生合成が抑制されてしまうので、n-6系の脂肪酸とn-3系の脂肪酸はバランスよく摂取する事が大切になります。






参考文献
基礎栄養学
基礎栄養学 健康・栄養科学シリーズ
栄養科学シリーズNEXT 生化学
栄養・健康化学シリーズ 生化学
わかりやすい生化学
有機化学 (わかる化学シリーズ)



この記事を書いた人

kain

kain

ビタミネ管理人のkainと申します。2003年より当サイトを運営。ビタミンやミネラルに関する記事を多くの参考文献をもとに多数執筆。各記事には参考文献一覧も明示。

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text by 2010/05/26






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