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情報伝達とミネラル




情報伝達の働き

情報伝達は人間の様々な生命活動に関わっていて、例えば神経間の信号伝達をはじめ、筋肉の収縮、腺組織での外分泌やホルモンの内分泌でも情報伝達が働いています。カリウムとナトリウムはこの情報伝達の働きに欠かせない「活動電位の働き」と「細胞膜内外の電位差の維持」の2つに関与します。どちらも情報伝達には欠かせないもので、要はカリウムとナトリウムは活動電位が働く仕組みと働くための環境作りの両方に欠かせないミネラルなのです。






活動電位とは

活動電位とは何らかの刺激に応じて起こる細胞膜内外での電位差の逆転現象のことで、活動電位は一ヵ所にとどまるのではなく、膜上をすばやく伝播して行きます。活動電位の発生速度はわずか数ミリ秒と非常に短く、このスピードの速さが情報伝達に有利に働きます。活動電位は神経や筋肉など様々な細胞で起こり、それら細胞の組織間・内で情報伝達を行います。活動電位の発生組織として最も多いのが神経細胞でその次が筋肉細胞です。神経細胞で発生した活動電位は神経細胞同士や神経細胞から筋肉・腺組織など別の細胞へと情報を伝達するのに使われます。



活動電位の仕組み

活動電位の仕組みについてさらに詳しく見ていきます。 まず膜の電位が動かずに静止した状態を静止膜状態(電位)といいます。膜の内側はマイナス70mVですがここからプラス方向に変化した時これを脱分極といいます。脱分極して膜電位がマイナスからプラスに変化し、頂点に達してそこから再びマイナスへと変化して静止膜電位へと向かう動きを再分極といいます。静止膜電位よりもマイナスになったときは過分極したといいます。

このときナトリウムとカリウムはどのように関わるのでしょうか。まず興奮刺激により膜に局所的な電位変化が生じると、膜にある電位依存性ナトリウムチャネル(ふたつき通路)が開きます。ナトリウムチャネルが開くと細胞外から細胞内にナトリウムイオンが流入してきてその結果膜内の電位があがり、ついには電位がマイナスからプラスへと逆転します。なぜナトリウムイオンが膜内に流入すると膜内の電位が上がるのかについてはつぎで詳しく説明しますのでとりあえずここではそういうものだとして理解してください。プラス30mVまであがると今度は開いていたナトリウムチャネルの中の電位感受性不活性化ゲートと呼ばれるある一定まで電位が上がると逆に蓋をしてしまうゲートが働いてしまうので、そこでナトリウムの流入は止まります。すると今度は逆にこれまで閉じていた電位依存性カリウムチャネルの電位感受性不活性化ゲートが開いてたくさんナトリウムが流入して来た膜内からナトリウムに変わってカリウムが膜外へと流出します。そうすると今度は再び膜内の電位が下がりはじめ最終的には静止膜電位へと戻ります。このようにナトリウムとカリウムは活動電位の仕組み自体に密接に関わっているのです。

細胞膜外から細胞膜内へナトリウムイオンが移動 → 電位が上がる


プラス30mVに達する

細胞膜内から細胞膜外へカリウムイオンが移動 → 電位が下がる



膜内外の電位変化について

ナトリウムイオンが流入することでなぜ細胞内はプラスになるのかについてみて行きます。まずはイオンについての理解と、そのための原子についての説明をしていきます。原子とはプラスの電荷を帯びた原子核とマイナスの電荷を帯びた電子からなります。原子核と電子の電荷は同量なので原子自体はプラスマイナスゼロで中性になります。原子が電子を放出すればマイナスが減り原子はプラスになり、逆に電子を受け取ればマイナスが増え原子はマイナスとなります。このように電子の授受によりプラスやマイナスに帯電した原子をイオンといいこの現象をイオン化といいます。



では細胞内外のプラスマイナスはどのようにして決まるのでしょうか。これは細胞内と細胞外で存在するプラスイオンの多い方がプラスで少ない方がマイナス、もしくはマイナスイオンが多い方がマイナスで少ない方がプラスというように決まります。要するにプラスイオンやマイナスイオンがどちら側に多いか少ないかでプラスマイナスは決まるのです。ナトリウムイオンもカリウムイオンもどちらもプラスイオンです。ナトリウムイオンとカリウムイオンの多い方がプラスなわけですから、細胞内にナトリウムイオンが流入すれば細胞内の電位はどんどんプラスに傾き、逆にカリウムイオンが細胞外へ流出すれば細胞内の電位はマイナスへと傾くわけです。


活動電位には電位差が必要

活動電位が生じるためにはまず前提条件として細胞膜の内外で電位差が生じている必要があります。この電位差を形成するのに欠かせないのがナトリウム・カリウムイオンポンプとカリウム漏洩チャネルです。まずはナトリウム・カリウムイオンポンプの働きについて見て行きます。

ナトリウム・カリウムイオンポンプとはATP(アデノシン5'-3リン酸)のエネルギーを利用して細胞の中から外へナトリウムイオンを3個、外から中へカリウムイオンを2個運ぶ輸送たんぱく質の一種です。このとき細胞内は入ってくるプラスイオン(カリウムイオン)よりも出て行くプラスイオン(ナトリウムイオン)の方が多いのでイオンポンプが働けば働くほどどんどん細胞内のプラスイオンの数は少なくなって行きます。結果として細胞内はどんどんとマイナスへと傾いていくのです。これが細胞膜内外の電位差を生じさせるひとつの要因です。



カリウム漏洩チャネルとは

細胞内外に電位差を生むもうひとつの要因がカリウム漏洩チャネルです。カリウム漏洩チャネルとは細胞内外でイオンの輸送を担うたんぱく質であるイオンチャネルの一種です。イオンチャネルは細胞内外のイオンの濃度差や電位差に応じて基本的には高いほうから低いほうへとイオンを輸送します。これを受動輸送といいます。通常イオンチャネルは通行できないように閉じられていて膜電位の変化などの刺激に応じて開くのですが、中には漏洩チャネルと呼ばれる常に開きっぱなしのイオンチャネルも存在しています。イオンポンプもイオンチャネルの一種ですがイオンポンプはATPエネルギーを活用して濃度差や電位差に逆らってでもイオンをある一方向に移動させることが出来ます。これを能動輸送と言います。

受動輸送と能動輸送

カリウムは細胞内に多く存在しているので、漏洩チャネルによりカリウムは濃度差による受動輸送によってカリウムの多い内からカリウムの少ない外へと流れて行きます。ナトリウムイオンは逆に細胞外に多く存在していますが、ナトリウムイオンのイオンチャネルは漏洩チャネルではないので、通常ナトリウムイオンの多い外から少ない中への移動は起こりません。ナトリウムイオンが内にはいってこないのにカリウムイオンばかりが外に流出してしまうと外のイオンの数がどんどん多くなってしまいます。その結果イオンの多い細胞外がプラスに、イオンの少ない細胞内がマイナスになるわけです。






参考文献
サプリメントデータブック
栄養科学シリーズNEXT 生化学
わかりやすい生化学
有機化学 (わかる化学シリーズ)



この記事を書いた人

kain

kain

ビタミネ管理人のkainと申します。2003年より当サイトを運営。ビタミンやミネラルに関する記事を多くの参考文献をもとに多数執筆。各記事には参考文献一覧も明示。

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text by 2010/03/24








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