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ビタミンA欠乏症・過剰症




ビタミンA欠乏症

夜盲症


ビタミンAのレチナールは視覚色素であるロドブシンの構成成分です。レチナールは光の刺激により化学変化を起こし、光がなくなると元に戻ります。この働きにより目の明暗を感知する働きに関与します。ビタミンAが不足すると光の感受性が落ちて、暗順応が遅延してきます。暗順応とは急に暗いところに入ったときに、徐々に目がなれてくる反応のことです。進行すると暗いところで物が見えにくくなる夜盲症になります。

夜盲症の症状自体は古代エジプト時代の古文書にも記載されているほど古くから知られているものですが、ビタミンAの欠乏が原因であるとわかったのは1900年代に入ってからです。




皮膚や粘膜の疾患


ビタミンAは体中の上皮細胞の成長・分化に関与しているので、不足すると上皮細胞が角化し、免疫機能の低下につながります。

皮膚症状
毛嚢口(毛穴)に角化した皮膚上皮細胞が堆積して結節ができる。好発部位は上腕、大腿。進行すると肩、背部、臀部、腹部にも認められるようになる。脱毛、色素沈着、接触性湿疹を伴う場合もある。


涙の分泌が減少して眼球結膜乾燥や眼球乾燥症を症じる。進行すると角膜軟化症を発症し、角膜が破壊されて水晶体が飛び出し失明することもある。

気管・消化管
気管支粘膜の上皮細胞が萎縮変性して炎症を起こす。消化管、中でも胃粘膜が萎縮して分泌障害、食欲不振をきたす。胆道・輸尿管の粘膜が角化し、はがれて集積した塊が結石を作る事もある。

生殖器
輸精管上皮の変性と睾丸の萎縮、子宮粘膜の角化による不妊への影響が起こります。

胎児の発生異常
ビタミンAは上皮、器官、臓器の成長・分化に関与するので、欠乏すると胎児の発生異常が生じます。ビタミンAのレチノイン酸が遺伝子の発現をコントロールしていることによります。



ビタミンAの1日の必要量、推奨量は?

ビタミンAの成人男女の推奨量


ビタミンAが欠乏すると夜盲症や各種皮膚・粘膜疾患が生じるため、欠乏症に至らないためにもまずは1日のどれくらいのビタミンAが必要となるのかを知っておくことが大切です。日本食事摂取基準ではビタミンAの一日の推奨量を成人男子は850μgRAE、成人女子は650μgRAEと定めています。

推奨量はレチノールとβ-カロテン変換量の合算値


RAEとはレチノール活性当量のことです。ビタミンA(レチノールは)は植物性食品などに含まれるβ-カロテンから体内でも合成されます。その変換率は1/12程度だといわれています。例えばにんじん100gからは8600μgのβ-カロテンが摂取できますが、レチノール当量に直すと720μgとなります。日本食事摂取基準で定めているレチノール当量とは、食品から摂取するレチノールの量とβ-カロテンが体内でレチノールへと変換されて利用される量の両方を合わせた数値です。

レチノール活性当量



ビタミンAの多い食品は?

レチノールの多い食品


ビタミンAの欠乏症に至らないためにはまずはどのような食品にビタミンAが多く含まれているのかを知っておくことが大切です。ビタミンAは動物性食品にはレチノールとして存在しています。レチノールが多い食品は豚や鶏、牛の肝臓やほたるいか、うなぎ、あなご、ぎんだらなどです。このうち豚や鶏の肝臓はレチノールの量が非常に多すぎるためむしろ取りすぎによる過剰症の心配が出てきます。このため豚や鶏の肝臓の摂取は少量に控えるようにしましょう。

牛肝臓(レバー)はビタミンA(レチノール)が多い

推奨量はレチノールとβ-カロテン変換量の合算値


すでに述べましたがビタミンAはβ-カロテンからも生成されます。β-カロテンは植物性食品に多く含まれます。植物性食品ではにんじんやホウレン草、カボチャや春菊、モロヘイヤや大根の葉といった緑黄色野菜に特に多く含まれています。また食事としてとれる量は限られますが海藻類のノリや抹茶も少量でもそれなりにβ-カロテンは摂取できます。毎日の献立でこうした緑黄色野菜をしっかりととっていればβ-カロテンやレチノールなどのビタミンAは十分に摂取できます。ビタミンAの多い食品についてはビタミンAの多い食品・食べ物と含有量一覧で詳しく解説しています。

にんじんはβ-カロテンが豊富



ビタミンA過剰症

ビタミンAは脂溶性なので、対外に排出されず蓄積され過剰症を引き起こすことがあります。ビタミンAを過剰に摂取すると血中のレチノイン酸濃度の一過性の上昇がみられます。一過性とは一時的にという意味です。ビタミンAの過剰摂取による臨床症状はレチノイン酸によるものと考えられています。レチノイン酸は何かというとまずビタミンAは食品からレチニルエステルとして取り込まれ、体内でレチノールに変換されて吸収されます。レチノールは最終的にレチノイン酸へと代謝されます。 ビタミンAの過剰症には急性症状と慢性症状があります。

急性症状
全身倦怠感、頭痛、吐き気、めまい、顔面の浮腫、皮膚の剥離など。これらは脳脊髄液圧の上昇に伴うものです。
慢性症状
頭蓋内圧亢進症、皮膚の剥脱、脱毛、筋肉痛、肝障害、関節炎など

通常の食生活では過剰症になることはありません。ビタミンAは動物では90%が肝臓に含まれているので大型の動物や成魚、例えば北極熊やくじら、サメやアザラシ、マグロなどのレバーを大量に食べると、摂取後数時間程して、過剰症状がでてきます。またサプリメントを大量に摂取した場合にも過剰症になります。なお摂取をやめれば1,2日ほどでこれら症状は消失します。

胎児の先天異常
妊婦のビタミンAの過剰摂取では胎児の顔や頭に異常が起こることが報告されているので特に注意が必要です。ビタミンAの過剰摂取と胎児の先天異常に関する因果関係はまだ明らかにはされていませんが、多くの疫学研究によりその関連性は報告されています。

最近の研究ではビタミンAを1日3000μgRE以上摂取すると、1日1500μgRE摂取した群と比べて先天異常の発生の確率が2倍以上になるといった報告もなされています。こうしたことから厚生労働省では妊婦のビタミンAの耐用上限量は付加量も含めて3000μgREに設定されています。

プロビタミンAであるβ-カロテンであれば必要量のみ体内でレチノールへと変換されるので過剰症の心配はないとされています。このため妊婦は摂取するビタミンAの半分はプロビタミンAから摂取すること望ましいとする意見もあります。






参考文献
サプリメントデータブック
専門医が教えるビタミン・ミネラル早わかり
エキスパートのためのビタミン・サプリメント
基礎栄養学 スタンダード栄養・食物シリーズ
基礎栄養学 健康・栄養科学シリーズ
日本人の栄養所要量―食事摂取基準
日本人の食事摂取基準2010年版
日本人の食事摂取基準2015年版



この記事を書いた人

kain

kain

ビタミネ管理人のkainと申します。2003年より当サイトを運営。ビタミンやミネラルに関する記事を多くの参考文献をもとに多数執筆。各記事には参考文献一覧も明示。

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最終更新日 2016/11/01






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